横山町大勝軒 東京・日本橋横山町





低く薄暗い灰色の雲が広がり涼しい風が木々を揺らして、周辺最高気温が26度ほどで午後から雨の予報が出ていた、そんな八月葉月下旬の休日火曜日だった。

先日こちらへよく行かれる方に偶然お会いする機会があり、チャーハンを必ずオーダーするくらい好みなのだそうで、そんなことをお聞きして何とも気になるところとなっていた。

そうした時につい調子にのってよく行くような台詞を言ってしまった手前もあり、チャーハンも気になるしとなった。

ここ三年ほどご無沙汰していて、先日は浅草橋大勝軒でこちらの名前も出て来て、ちょうどまた行きたくなっていたこともあって出掛けることにした。

と言うわけで浅草橋駅前のもう一軒の気になるお店を横切って、やはりこちらかなとなって、そこからやや歩いて久しぶりのこちらへやって来た。

創業大正十三年、大勝軒。そう黒い暖簾に記されているこちらで、建物の外観もあってその創業年がこれ以上ない説得力に満ちた店先だった。

浅草橋でこちらが、本家人形町大勝軒の直系であることをお聞きしたものだ。さりげなく入店すると以前と変わらぬ時が止まったような店内に、先客が一人だけおられ美味しそうにそばをすすっていた。

近くに住む地元の方かも知れないが、服装や足元からすると電車に乗ってここまで来たような感じだった。入口の大きなテーブルの奥の椅子に座って食されていた。

そのテーブルの手前の入口寄り壁際の席に腰掛けようとすると、厨房から私の来店に気づいたお店の方が冷水を注いだコップを持って来てくれた。

まずは予定通りに、汁錦飯と書いてヨウギンハンと読ませるヤキメシをオーダー。そして炒焼麺と書いてシャショウメンと読ませる焼ブタソバもお願いすると今日はたまたま提供出来ないそう。

残念だがそれならば致し方ないとして、それでは鳥ソバと言うとすんなり直ぐオーダーが通った。人形町系大勝軒の中でも、一番歴史を感じるこちらだ。

若い頃よく一人旅に出掛けて大正時代の建物を見学したものだが、まさしくそんな雰囲気のこちらで時間を忘れたい方が居たら是非ともお奨め出来る店内だ。

程なくヤキメシが到着。「チャーハンはカツ丼が入るようなドンブリの器に入って来るんですよ」とお聞きしていたが、なるほど有田焼きのような雰囲気のあるそれに入ってやって来た。

口にして行くとチャーハン的でありながらも、ヤキメシのような風合いもあって良き時代のチャーハン以外のなにものでもなく、実にパラパラ加減が絶妙でかなり良かった。

そして鳥ソバも、程なく到着。チャーハンが丼なら、ラーメンは今回皿うどんの器のような洋皿に入って来た。まるで、スープスパゲッティのようなスタイルだ。

汁ソバに野菜がたっぷり入った、鶏ササミ肉のうま煮がのせられたもので、そこはさすがの美味しさ。それだけに、気がつけば完食だった。

大正時代国内に中国料理店が広がって行った頃、中国人の中華店を参考にして日本人が店舗経営して行った時、そうした提供メニューは中国語で表記したのだと思う。

そんな提供メニューが、まさしく目の前にあるメニューリストなのではないだろうか。今でこそ普通にラーメンと呼んでいるが、こちらでは肉絲麺と書いてヨウシメンとあらわしていた。

そう言えばチャーハンの容器も、如何にも日本人の手により作られたことが伺えるものだ。

いや、かなりなかなかで良き時代の風が感じられた、果てなく絶大に素晴らしく実に素敵な風情の鳥ソバとヤキメシだった。

(左フォト) 店頭と周辺/汁錦飯(ヤキメシ)/鳥ソバ (2014.08.26)


 横山町大勝軒

 住所:東京都中央区日本橋横山町8-12   TEL03-3661-7068

 定休日:日曜日  営業時間:11:30〜LO19:00

 アクセス:都営地下鉄新宿線馬喰横山駅A1出口下車。同出口を出たら左手に歩いてまもない左
       路地の横山・橘共栄会通りを入って行く。合流路を左に進んで程ない左手にあり。



浅草橋駅から歩いて行った場合、この道を入って行く。

本家人形町大勝軒直系の横山町大勝軒だ。

その歴史は古く、創業大正十三年。

メニューリストおもて側※金額は変わる場合があります。

メニューリストうら側※金額は変わる場合があります。

薄暗いフロアは、時間を忘れさせてくれるほど。





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やや気温が落ちていたものの少しまた戻して、春の風景と陽射しが都会の中でも変わらない、そんな季節を映していた4月半ばの水曜日だった。

6年近く前に初めて訪れた人形町系大勝軒で、まずその皮切りが浅草橋大勝軒だった。

それから昭和62年に創業した人形町大勝軒を訪れ、そして大正3年創業の浜町大勝軒が元らしい新川大勝軒へ訪れた。

そこが現在都内で一番古くから営業して来たラーメン店だった事を当時訪問して知り驚いたものだ。

そしてこちらを訪れて日本橋本町の大勝軒小岩の大勝軒の別の人形町系にも行って見て、しばらく前に再度人形町大勝軒へ訪問した。

その大元は珈琲大勝軒となってから途絶えてしまったが、その大元の人形町大勝軒は明治45年創業と言うから何処の大勝軒よりも歴史があるその系統である。

今回周辺新店訪問の関係でまたこちらへやって来て、そちらの前にこちらへ先に訪れて見たくなりその暖簾を潜った私だった。

前回訪れてから今回までの間に、何度か店頭を横切っていたものだった。

時間が止まったままのような店内は、まさしく殆ど変わっていなかった。お店の方が冷水を持ってオーダーを取りに来たので、予定通りラーメンをお願いした。

壁面には以前は見られなかった、鶏ガラと昆布を利用している旨の案内が張り出されていた。程なく到着。

こちらも油が浮かない所為で、ラーメンから大量の湯気が立ち上がっており、息でフーフーしながらデジカメ撮影するしかなかった。

それではと行かせて貰えば実に美味しい麺とスープで、胡椒を使ってやや味を立たせた風合いを感じるもの。

とは言え穏やかでじんわりと来る旨みがさざ波の如く打ち寄せて来て、中太麺の適度なコシが好きになれた美味しさだった。

昔ながらの食紅が付いたチャーシューに、刻みネギの風合いと程よい堅さのメンマも良かった。気がつけば完食。いや、かなり良かった。

(左フォト) 肉絲麺(ラーメン)/店舗外観 (2011.04.13)


銀杏の葉が黄色く色づき、はらはらとアスファルトの歩道に落ちて行く、もう11月も下旬の木曜日。こちら界隈に営業で出て、一段落つけて店頭に立つ。何とも古風な和風建築の建物。

老舗和装店のような面持ちだった。そこに紺で染まった暖簾が、毅然と掛けられている。白抜きの大勝軒の文字の上下には、家紋と創業大正十三年の文字。

そしてその暖簾の上を見ると、店名が壁に打ち付けてある。袖看板には中華料理ともあり、やはりこちらは人形町系であった。

中に入ると、外観のイメージ通りの裏切らない店内で、入り口に後から用意した様な大きいテーブル席があり、奥には広い和室に座卓席があった。

先客2、後続2。座ってからプラスチックカバーのメニューを手に取ると、中国語にカタカナでふりがなが書いてあり、主だったものには判り易い品名が下にあった。

まごつきながらも、湯洲麺と書いてヨウシメンと読む、五目ソバをお願いする。程なく到着。

これは旨いじんわり系。タンメンとも違う野菜入り塩ラーメンで、酢が入っているかのような感じで何ともマイルド。

麺は低加水感がありながら、もちもちしていて、極めて普通でありつつ独特な雰囲気もあるもの。

紅がついた可愛いチャーシューに野菜と玉子が入り、ああ美味しいなぁと感じる、優しい味わいのラーメンだった。気が付けば完食。いや、旨かった。

精算してやや暗い店内から外に出れば、落ち葉舞い散る問屋街。横山町の陽射しの眩しさに手をかざして前へ進んで行った。

(左フォト) 湯洲麺(五目ソバ) (2005.11.24)