龍鳳 東京・日本橋箱崎町





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それは静かに微量の雨が、めくり忘れていた秋の一頁を広げる様に、東京のアスファルトジャングルを濡らしていた。珈琲の香り漂う穏やかなカフェに、ピアノのセレナーデの旋律が似合っていた、九月最終日水曜日の朝だった。

そんな今日はまた同行営業の日で、都内を営業車で動いた日となった。雨足は弱いものの、久々に途中で止む事もなく一日中降り続いて、ワイパーの規則的な動作音がタイヤの水切り音と共に車内に響いていた。

ランチの段となってこちらと言う話しが出て、思わずその美味しさからそれは是非行きましょうと、私も進言して周辺首都高下のパーキングに入れて到着した。

以前訪問した時は日曜日の午前中と言う事で、数席だけが埋まる状況の店内であったが、今回店頭に着いて見ると平日のランチタイムで、店内は満席に周辺のサラリーマンやOLの方々が入り口で入店を待つ盛況振りだった。

特に並んでいるわけでも無かった事から、記帳する紙を探すと精算レジカウンタの手前にそれが置いてあり、そばにあったペンで名前と人数を記入した。

そう時間も経っていない頃、人数の多い先客の方々ばかりだった所為か、比較的早く名前と人数が呼ばれ、相席に対して了承すると比較的若い3人のOLが座る丸テーブル席に案内を受けて着席した。

同行の方は私が絶賛していた海老の担々麺を選び、私は今回その担々麺の素晴らしさから清湯(チンタオ)もさぞかし良いだろうと、豚肉細切りスープそばを大盛でオーダーした。中国語でも表記されていて、ルースータンメンとルビも入っていた。

かなり広い店内だがほぼ全席が埋まり、入り口には到着した時の倍の人数に膨れていた。高速道路の下にある中国料理店だが、もちろん騒音が響く事もなければ、揺れも殆ど気にならない範囲と言えた。

平日混雑時のランチタイムでも、担々麺は挽き肉と海老とそのミックスの3メニューが用意され、通常の汁そばもオーダーした豚細切り以外に海老そばがあり、さらに週替わりそばとして五目そばにネギそばもあった。

こうした混雑時はメニューを簡略化させる事で入店客の回転を上げる事が最課題となり、麺メニューは作るのも食べるのも早い事から重宝がられるもので、週替わりそばがある事からもそれが如実に顕れていたメニューリストだった。程なく到着。

おお、細切りされた豚肉と青菜が、穏やかな下味がついたトロミの中でたっぷりと泳いでおり、その華やかなビジュアルからも既にその美味しさは約束されたようなものであった。

それではと行かせて貰えばそれはもう、いやいやいやいやいや美味い美味い美味い美味い美味い美味い美味い美味い。担々麺の時と同じ感動領域がまたやって来て、何故にそこまで美味いのかと言うしかなかった。

こうしたトロミのあるスープの場合、後半になってから醤油等から来る、塩気を強めに感じてしまうケースもあったりするが、そんな事も当然無くどこまで進んでもまったりとした快感を与えてくれた。

加水低めの細ストレート麺も、その分ヤワめなものの小麦の質の良さに喉越しも滑らか。こうした汁そばは少なくとも半分近くは、麺がその良さを決めるもので、その点で大変に良い麺であった。

第一印象辺りで、横浜中華街の永楽製麺所のブランド名が脳裏を過ったが、帰りにさりげなくお店の方に確認して見ると、橋爪製麺と言う製麺所の名前をお聞きする事ができた。

場所的にも多くの海外の方が集う場所にこちらがあり、日本のラーメンに対するイメージに良い印象を与えるだけでなく、手頃な金額で楽しめるその美味しさから、アジアの食文化全体の知名度も押し上げているかも知れない。

(左フォト) 豚肉細切りスープそば/ショーケース上の店名ロゴ (2009.09.30)


青空に綿菓子のような白い雲がゆっくりと漂い、夏の置き土産の蝉の鳴き声が彷徨い、頬を撫でる微風が季節を鮮鮮(あざあざ)しくさせていた、そんな長月上旬休日の日曜日だった。

時に食品業界に勤めていると、そこは美味しい食品を知る機会も増えたりするものだが、私の場合はラーメンの情報にアンテナを張っている。

そんな中でこちらの担々麺が、なかなかの人気と味を誇る事を知った。箱崎インターチェンジの下にある、東京シティエアターミナルの2階の中国レストランであった。

高校を卒業して入社した会社に、数年前に勤めていた会館も茅場町で、銀座から箱崎に至る界隈までは慣れ親しんだ地域だ。

そんなわけで出掛ける事にした本日であった。半蔵門線電車に乗って、水天宮前駅で外に出ると、まだ午前11時を過ぎたばかり。開店まで少しだけ時間があったので、人形町まで足を延ばして界隈を歩いて見た。

そろそろと言うことで首都高速の下へ向かい、見上げる位置までやって来れば、矢印が付いた東京シティエアターミナルの大きな看板があり、成田空港でもよく見掛けるオレンジ色の大型バスが連なって停車していた。

道路沿いには2階へ上がる為の階段があり、その頭上にはレストランがある事を示す標識のようなマークがあった。そこを上って行きその中を進んで行けば、最初にあったレストランがこちらであった。

開店時間までもう数分あり、館内の奥まで進んで行くと、ゆったり出来そうなチェーン系カフェに、マクドナルドもあり、何でもありそうな雑貨店とも言えない様々な商品が並ぶショップが目を引いた。

成田空港のフライトインフォメーションが、遠い国へ誘う最初の場所である事を暗示していた。そんな航空機のフライト状況を目にしていると開店時間が過ぎていて、こちらの店頭に立てば間接照明が入店を促すように雰囲気を高めていた。

開店して既に数分だけ過ぎていたが、もう数組の先客がおられ、周囲でその営業の開始を待ち受けていたのだろう。

大変ゴージャスな調度品や装飾品があり、まるで上海の高級料理店を思わせるような雰囲気だった。単独入店を指一本立てて示唆すると、余裕のある二人用テーブル席へ案内してくれた。

ブック状のメニューリストが手渡され、広げれば四千円からの様々なコースメニューがまず案内されており、ページを捲って行けば単品メニュー・麺類・飯類・点心・アルコール・飲料の順に、インフォメーションが成されていた。内装は高級店の雰囲気だが、価格は一般中国料理店と変わらなかった。

麺類の冒頭を見ると、フカヒレ煮姿そばが何と1800円から楽しめる様になっており、その高級食材は名立たる一流ホテルと同じ信用の高い仕入れ先らしい。

そして幾つかの麺料理の後に坦々麺があり、ひき肉入りやチャーシュー入りもあったが、予定通りに芝海老入り辛子胡麻味噌そばとある「蝦仁(シャーレン)担々麺」をオーダーした。

店内は大変広く何処までも高級中国料理店らしく、その雰囲気はふと赤坂飯店を思い出させる感じもあり、奥には屏風なども立て掛けられていた。程なく到着。

おお、もう見るからに美味しそうな蝦仁担々麺だ。軽く小麦粉だけ付けて素揚げされたような芝海老は比較的大きめで五個も入っていた。

赤い坦々スープは複雑多面なその彩りを輝き放ち、青菜が添えられる事によって更なるビジュアル性が高められ、そして膨よかな胡麻の香りが迸って来た。

それではと行かせて貰えばそれはもう、美味い美味い美味い美味い美味い美味い美味い、絶え間なく美味い。中細ストレートの麺はカンスイを感じない分、ぷるんとしていて小麦粉感も上級な事が判り、先述の坦々スープは辛味も程よく冴え渡る美味しさ。

胡麻のコクが豊潤な旨みと相俟って、それが舌に染み渡って行くもの。変なしつこさは微塵もなく、却って不思議な程にその良さから、すっきりとした清らかな気持ちとなった。

芝海老もまた、これに限らず全てにおいて実直な下処理もあり、その極上感を底上げしてくれる美味しさで、海老好きな方にも感動の一杯を、きっともたらしてくれる事だろう。

その一杯と向き合う時間が、長ければと言う事になってしまうが、そうすれば料理の感動とは作るものでは無く、活かすものだと語って来るに違いない。

いやいやいやいや、気が付けば完食。ここまで食材の良さを感じた、美味しい担々麺があったろうか。断然に良かった。


(左フォト) 蝦仁担々麺/店内風景/店頭外観/箱崎ICのすぐ下 (2009.09.06)


 中国料理 龍鳳 (りゅうほう)

 住所:東京都中央区日本橋箱崎町42-1東京シティエアターミナル2F

 定休日:年中無休  営業時間:11:30〜14:00/17:00〜21:00 ※土日祝日〜20:00

 アクセス:東京メトロ半蔵門線水天宮前駅下車。4番出口から出て目の前にある首都高速道下に
       ある、東京シティエアターミナルの2階にあがり、左手へ進んで程ない右側。人形町駅等
       からも、徒歩圏内。



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