味のらーめん太郎 千葉・天王台









爽快な青空に高い秋の雲がたなびき、穏やかな北風が軽く小枝を揺らし、先日八百屋で買って秋を堪能した橙色の柿が、他人の家の軒先に撓わに実っていた、秋も佳境の霜月上旬の日曜日だった。

現在の総理大臣麻生太郎氏の名前でも判る様に、その昔の最も代表的な長男の名前は「太郎」で、市役所の住民票依頼用紙の記入例にも松戸太郎などとあり、ウルトラマンにだってある名前で、西暦700年代から端を発する名前らしい。

そんな名前を持つラーメン店が、かつて新京成電鉄五香駅の西口ロータリー左奥にあった。その名は「らーめん太郎」で、以前にも触れたが私が物心がついて、自分のお小遣いで初めて食べたラーメンがそこの味噌らーめんであった。

このサイトを始めた頃はまだ営業していて、それは私にとってまるで空気の存在だったかの如く佇んでいたお店だった。20代後半に実家を離れる前に成人になった後も、数度訪れていたような無いようなそんな感覚だったラーメン店。

そしてある程度ラーメンを食したら、そのお店にも行って見たいと思っていた。そして或る晴天の日の実家へ立ち寄った際、そのお店が突然閉店していた事に気が付き、店頭に立ち尽くしてから四年の歳月が流れた。

独特な太さの麺で、その味噌スープは随分濃い様に、当時感じていたものだった。出来うる事であれば、痛切に出会いたいラーメン店だった。

しかし、インターネットの検索を駆使しても、大した情報も得られずに、月日は流れて行くばかりだった。

ところが最近になって、ケータイラーメンサイト「超らーめんナビ」の前日の、アクセスランキングの千葉県のページにおいて、まるでキツツキにつつかれた様に(普通キツネにつままれたと言います)、こちらのお店がランキング入りしていた。

これは実に待ちに待った情報であり、休日となった本日早速出掛ける事にした、実に私46歳の秋であった(そんなくだりはいらない)。

JR天王台駅などから徒歩圏内だが、やや遠くそして周辺には手賀沼があり、そこでひらめいたのが手賀沼観光の為に、自治体関連の財団法人が有料で貸出しているレンタサイクルの利用だった。

せっかくだし手賀沼も散策する事にした。(注:冬季はレンタサイクル休止)そんな訳で、常磐緩行線の電車に揺られ、我孫子駅に到着。

南口ロータリー右手の路地を入りすぐ左折して少し歩いた左のビルの一階に自転車の貸出し場所があり、ノートに住所と電話番号を記入し、三百円を支払っていざ出発。

幸い天気も大変に良くサイクリング日和で、ペダルも軽やかに快走して行く。駅から数分で手賀沼に隣接する手賀沼公園へ着いた。そこは本日の様に、休日には子供を乗せて走るミニSLもある人気スポットで今日はフリーマーケットも開催されて一段と賑やかな公園内だった。

手賀沼は、日本が高度成長期に入るまでは清い水を湛えた沼であったが、徐々に水質が悪化して行き昭和50年頃からひどくなってしまったが、ここ数年は自治体の努力により徐々に良くなっている。眺める風景も、どこか西欧的な佇まいを感じる場所も多い。

そこで一息ついた後、手賀沼沿いの遊歩道を自転車で更に進んで行き、あやめ通りに入り一路こちらに進路を向けた。途中で成田線の線路を跨いだ道路を通過。成田線はそう言えば単線だった。成田線? ・・・・・・。左折する場所を行き過ぎてしまった(おいおい)。

そして正午を少し過ぎた頃に店頭へ到着すると、こちらが風情も良く佇んでいた。やはり何処と言う事なく、五香にあったお店に外観の雰囲気が似ていた。店頭にあった立て看板は、たしか見た記憶がある。

店内に入ると、空いていたカウンター席に腰掛け、メニューから大盛みそらーめん600円をオーダー。と言うのも、私はこちらで味噌味しか食べた記憶がなく、確か他の味のラーメンは食していない筈。先客2名でテレビが点いているものの、もの静かな落ち着いた店内。

五香にこちらがあった頃近くに住んでいて、子供の頃から何度となく食した事をお伝えすると、ご店主は寡黙だったが、代わりに女将さんの方がそれに対して返して頂き、私の訪問を喜んでくれた。たびたび私のような方が訪れるそう。

世間話しが弾みに弾んで、大変に貴重なお話しを聞く事もできた。店頭に松戸創業45年とあったから昭和38年頃の開業らしく、これから話す事はその少し溯った頃の事となる。

その頃五香界隈に八店舗近いラーメン店を経営する、八柱に今も石材商を営むN家石材店があった。その創業者は当時周辺で、麺と言えば細麺しか無かった時代に、今もこちらがウリにしている太平ストレート麺で味噌ラーメンを提供する事を思い立った。

その思い描く太平麺を製麺所に作らせ、カタカナでラーメンと書いた時代に、ひらがなでらーめんと表記して営業展開をしていたらしい。ところが本業に力を入れる為か不明だが、そのラーメン店を手放す事になり、その一店舗の権利を買ったのがこちらだったそう。

らーめん店は流行りに流行り、厨房にはいつも4〜5人を雇って対応する程で、私も当時ずいぶん台所に人がいるなと思っていたものだった。

みそらーめんは大盛りでも六百円と廉価で、さほどかからずに到着した。待望のみそらーめんとご対面で、感無量な私だった。

そのビジュアルは、さすがに以前の盛り付けは覚えていないが、来たみそらーめんは、挽き肉・キャベツ・モヤシがしんなりするまで炒められた具が中央に綺麗にまとめられ、そこに黒胡椒が掛けられていた。

それではと口にすれば、この厚みのある太平麺がスープと共に、口内で独特な小麦粉感覚の表現力を魅せ、やはり食べ歩きした中でも似た感覚はあっても、ぴったり符号するラーメンは無く、やはりなるほどと唸らせるものがあった。

それだけに、もう旨い旨い旨い旨い旨い旨い旨い旨い、おまけでもう一丁旨い旨い旨い。

味噌スープは、やはり以前に札幌味噌チェーン店で食した時の感覚と同じで、あんなに濃く感じたものがそんなに濃く感じず、日本人の食文化の欧米化が進んで、舌の感覚が変わった以外の何物でもないだろう。

その結果、ラーメンは比較的濃い味が好まれる様になり、豚骨魚介がもてはやされているのも、そんな背景があるからなのだろうか。

またここ数年の製麺の高品質化には目を見張るものがあり、ラーメン店主による麺茹での技術の高度化も見逃せない。今後の長い目で見た将来のキーワードとしては、濃過ぎるがゆえに自然回帰と言った感じだろうか。

気が付けば、そんな懐かしさが先に立った、らーめんを完食。松山千春の歌に初めて出会って、それを口ずさんだあの頃。あれから随分、経過したものだ。ラーメン自体の価値も変わり、また今後も変わってゆく事だろう。

そんな事をふと思った、一杯の味噌ラーメンだった。


(左フォト) 大盛みそらーめん/外観/店頭インフォ/手賀大橋/秋色の手賀沼 (2008.11.02)


 味のらーめん太郎 我孫子店

 住所:千葉県我孫子市高野山346-1  定休日:水曜日  営業時間:11:30〜15:00/17:00〜20:00

 アクセス:JR常磐線天王台駅南口下車。国道356号線を右折して、しばらく歩いた左側。天王台駅
       付近と我孫子駅近くに、土曜日曜祝日のみレンタサイクルを300円で貸出しており、それ
       を利用すると便利。


     
我孫子駅近くで借りたレンタサイクル。 湖畔では休日にフリマも行われる。 遮断機もある線路に、ミニSLが走る公園。 昔見た記憶があるタテ看板。


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