らーめんと甘味処 九月堂 東京・渋谷





午後から降り出した雨が夏の潤いを継ぎ足すかのように降り止まず、渋谷の街角をあらわにするように濡らしていた7月半ば日曜日の午後7時過ぎであった。

今日も昨日と同じ終業時間で外に出て、それならば普段行けない駅から少し離れた場所へ訪れようと考え、それで思いついたのが昨年の秋以来となるこちらであった。

雨でぬかるんだ足元に注意しながらも緩やかな坂道を上がって行き、パルコを越えて更にNHKへ向かって行った。

面白い事に雨も降っていたにも係わらず以前より遥かに早く店が在る路地に到達していて、如何にこの坂の多い渋谷の街の道に慣れていたかを実感したものだった。

さて階段を上がりドアを開けて中に入ると挨拶に迎えられ、前回のようにまずは券売機の前に立った。

すると夏期限定メニューが2種類ラインナップされており、「ピリ辛!汁なし担々麺」でも良かったがもう一つの「トマトと生ハムのイタリアン風冷製麺」を選んで、その隣りにあった限定用大盛ボタンの文字に思わず連打していた。

そして振り返ってチケットを手渡しながら以前来た事を告げると、その時の出来事を覚えておられて大変嬉しかった。駅からやや離れていて比較的中途半端な時間ながら、5〜6人のそこそこ盛況な店内であった。程なく到着。

そのヴィジュアルは何ともイタリアンチックでありながらも、そのオーラは不思議と和風な面持ちがある限定冷製麺。

その不可解さは口にしてみればなんのことはなく、具材はトマトにパルマ産生ハムにベビーリーフにクリームチーズと洋風だが、スープに煮干しを前面に押し出した塩味のスープゆえで、麺は正統派中細ストレートを冷製麺に利用したもの。

プロシュートにパルマ産など奇をてらわず、イタリアの風が店内を駆け抜けていた素晴らしさと言えた。しかし若い葉菜のベビーリーフをさりげなく利用する所など、そんな何気ない食材利用にはある意味の面白さが伺えた。

そしてそうした食材のナチュラルさがまたタマらないもので、この時季にぴったりでありつつも、妥協しないで作り上げた感覚が感じられた。

思わず修行先らしい淡麗系の持ち味に共通点を探してしまった。そこは大盛で量も良かったが、その美味しさゆえに気がつけば完食だった。

入店時にデザートも愉しむのがこちらの楽しみ方だと思っだが、時間もあってか殆ど売り切れになっていてそれを一度は諦めたものの、甘味処らしくかき氷があった事を思い出してまた券売機に行きそれの練乳いちごを選んでチケットを手渡してお願いした。

程なくやって来たそのかき氷は、なんとイチゴは果実からジャム状にしたもので、中に入るそのシロップも自家製だそう。食べ始めは判らずに480円は高いなと思ってしまったが、それはむしろ安いくらいの手間の掛け方と美味しさだった。


(左フォト) 夏期限定トマトと生ハムのイタリアン風冷製麺/かき氷練乳いちご (2010.07.11)


  2010.07.11 らーめんと甘味処の九月堂。   2010.07.11 公園通り沿いにパルコなどがあるお店の周辺。









頭上を見上げれば雲一つないスカイブルーが広がり、秋と意識してからどこかで気温が数度だけ高く感じる、十月最終コーナー金曜日の朝だった。

そんな今日は渋谷方面へ営業と決めて、ランチはこちらへおもむく事にした。朝から先述のような調子の天候だった事もあり、正午近くにはスーツの上着が邪魔なほどに初夏を想わせる陽気となった。

地下鉄銀座線で渋谷に出て、公園通りの緩い傾斜を進んで行く。

目の前が渋谷区役所となって来た所で、右路地を入り少し歩いた場所で、いわゆる空中店舗と言う事で建物の二階にこちらがあった。

階段を上がって行き二階に到着すると、まず丁寧で心地のよい接客に出迎えられる。そんな声に促されて入店すると、左手の背中側に券売機がある旨の案内があった。

そこで900円のらーめん・ミニそぼろごはんセットと、デザートとして3種のごまアイス盛りのボタンも連打した。

こちらは無化調のラーメンと一緒に、甘味も楽しめるメニューがウリのお店で、他にラーメンとアイス一品のセットも用意されていた。

そして振りかえれば、これ以上はないのではないかと思う位に、素晴らしいシチュエーションの店内スペースが広がっていた。

こうなるともうラーメン店と言うよりは、ヌードルカフェなんて言葉が似合いそうだ。ふと思い出したのは、銀座にあるプルーカフェだった。

壁など白を基調にした店内で、外側の面はガラスが一面に張られており、その分明るい店内となっていた。すぐ目の前が北谷公園で、木々の緑葉がまぶしく輝いているのが見え、小鳥のさえずりさえも聞こえて来そう。

店主はAFURI等で厨房に立った後に、ZUND-BAR等のスープを作る現場の責任者をされておられた方だそうで、今回独立してこちらのお店を立ち上げたそう。

奥様も同じ会社でパティシェをされていたそうで、そんな経緯から「らーめんと甘味処」と言う、コンセプトも自然に決まったのだろう。

店名の由来をお聞きすると、奈良県奈良市内に建立されている世界遺産にも登録された東大寺にある、国宝にも指定されている二月堂から来ているそう。

早春の風物詩であるお水取りも、そこでとり行われていて、そんないにしえの建築物にまだ若いのに興味がおありのようだ。

九月に本オープンする和風のイメージを前面に出したラーメン店と言う事で、それらを掛け合わせてこの店名が生まれたそう。程なく到着。

おお、幅広の器に入って一見ボリュウム等がなさそうに見えるが、実際はそんな事もなくビジュアル的にも美味しそうだった。

それではと口にさせて貰えばこれがもう何とも、いやいやいやいや、もう美味い美味い美味い美味い美味い美味い美味い美味い。

濃厚まろやか系なスタイルで、何とも言えない絶妙な速度で伝わる美味みの感じ方が良く、無化調慣れした世代が作るラーメンと言う観点から見ても興味深い味わいであった。

瀞みも極めて自然でありつつ、優しい味わいが舌を包み込んでくれるものであった。

瀞みは大量に使った鶏のモミジの所為だそうで、最近は米やジャガイモで整えるベジポタ系が多いが、そのような瀞みにはしたくなかったそう。

三河屋製麺さんの麺も、やはりとてもいい風情があり、具材も在り来りで済ませておらず、面白いのはお茶漬けで利用されるブブアラレが入っており、和のイメージをより引き立たせていたものだった。

またミニそぼろごはんも錦糸卵が彩りを艶やかにしていて、ボリュウムがそこそこに良くお肉もケチらずしっかり入っており、それがまたかなり美味しい味付けで、とっても美味しいサブメニューであった。

そして3種のごまアイス盛りも、飾り付けに何とも言えない味わいさえある綺羅びやかさが有り、そんなセンスの良さに口にするのがもったいない程であった。

ともあれそれは置いといて口にすれば、胡麻の風味や黒蜜の豊かな風合いで抜群な美味しさだった。もうそんなわけで今日もまた、気が付けば完食である。

ZUND-BAR出身と言うと神奈川端麗系的なイメージを持たれると思うが、こちらはまた違う味わいで、だからと言って荒々しい豪快さがある事もないものであった。

どちらかと言えば渋谷と言うお洒落な街角に似合った、濃厚な持ち味があるラーメンで、あえて言わせて貰えば「渋谷濃厚まろやか端麗系」と言った所であろう。

奇しくも数年前に閉店してしまった人気店だったチャーリーハウスがあった隣りの建物で、そんな確固たる人気店の称号を引き継げるよう影ながら心から祈りたい所であった。

(左フォト) らーめんこってり/ミニそぼろごはん/3種のごまアイス盛り/店舗外観 (2009.10.30)


 らーめんと甘味処 九月堂 [くがつどう]

 住所:東京都渋谷区神南1-15-12佐藤ビル2F  TEL03-6327-4056  定休日:水曜日

 営業時間:11:30〜15:00/17:00〜22:00 ※土日祝日11:00〜20:00 ※スープなくなり次第終了

 アクセス:JR渋谷駅下車。西武A・B館前の通りを原宿方面へ進み、左斜めに分かれる公園通りに
       入り、NHK放送センター方面へ歩いて行く。渋谷区役所手前まで来たら右路地を曲がっ
       て少し進んだ右側の建物2階にあり。



  2009.10.30 店内は白を基調に、ハイセンスなフロア。   2009.10.30 公園通りは緩やかな登り坂で、そんなに疲れない。



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